オーディオ評論家 山本浩司先生 Q Acoustics 3010i/3020i/Concept20 試聴
オーディオ雑誌HiVi、ステレオサウンド等でハイエンドオーディオ評論をなさっている山本浩司先生の都内アトリエを訪ねました。
Q Acousticsから「3010i」「3020i」「Concept20」を試聴、評価していただきました。
試聴機材
- Q Acoustics 3010i 3020i Concept20(2ウェイパッシブスピーカー)
- 3000iシリーズ専用スタンド
●画像左から Q Acoustics Concept20 / 3020i / 3010i (すべてホワイト)
・まずQ Acousticsの新製品スピーカー3機種通して言えるのは、「デザインの美しさ」だと思います。
ドライバーの周りを銀色のグリルで囲っているところがしゃれているし、バッフルはギリギリまでウーハーの口径に合わせていて、キャビネット容積は奥行で稼いでいるデザイン、そのプロポーションが素敵です。
ステレオペアで3010iは24,000円 3020iは29,000円、Concept20は50,000円、仕上げに安っぽさが全くないのにこの価格。すごく驚きました。
普段2万円台のスピーカーを聴くことはめったになくて、だいたいペア8万円くらいが入門用スピーカーという感覚をもっていたのですが、その1/3の値段なわけですから。この仕上げ・音の良さを勘案すると、ある意味価格破壊的な製品群だと思います。
● 3010i 試聴
-ヴォーカルがとても生々しい シンガーに抱くイメージ通りの声-
3010iを聴いて驚いたのは、エネルギーバランス、帯域バランスがものすごく真っ当に作られているところ。
低価格スピーカーって低音を強調して驚かせてやろうとか、高域にアクセントを付けるなど作為的な音作りをして、他社との差別化をするケースが多い。
だけど、3010iはそんなことは全くなくて、ミッドレンジを大切にした正攻法のチューニングがされています。そんなわけで、ヴォーカルがとても生々しい。シンガーに抱くイメージ通りの声が聴けて、とても感心しました。
fゼロ(最低共振周波数)を欲張っていない良さなんでしょうね、音に鈍さがなくて、マッシヴな音圧感がある。小型スピーカーは音量を落としていくと、途端に音がさみしくなるケースが多いのですが、3010iは低音がすっとなくなったりしない。音量を上げた時と下げた時の音のバランスも変わらないのは、実使用上とても重要なポイントだと思います。
● 3020i 試聴
-見事なステレオイメージ 奥行を伴ったステレオ感-
3010iと共通の、ミッドレンジが充実したエネルギーバランスですが、ウーファー・サイズが1インチ大きくなったことで、音にいっそうの余裕があります。
ローが伸びたというよりも、ミッドロウ(中低域)からミッドにかけての密度感が上がっていて、ヴォーカルにもより実在感が出てきました。その人らしさがより濃厚に伝わってくるんです。
Q Acousticsのスピーカーはすべて2ウェイで設計されているわけですが、ウーファーとトゥイーターをインラインで近接配置しているのがうまいと思います。点音源に近づけようという設計意図が、音の広がり感・音場感の良さ、音像定位のシャープさにつながっている。
フランク・シナトラの『オンリー・ザ・ロンリー』という1958年録音のふるいアルバムから「グッドバイ」という曲を聴きましたが、シナトラのヴォーカルが2本のスピーカーを結んだ線よりも少し前に出ているイメージで、その後ろに扇状のオーケストラが奥行方向に立体的な3D映像のように浮かび上がってきます。見事なステレオイメージだと思います。奥行を伴ったステレオ感、これはいわゆるハイエンドオーディオ的な表現力で、それが2万円台のスピーカーから聴けたことが大いなる驚きでした。
● Concept20 試聴
-目を瞑ると大型スピーカーが鳴っているような感覚-
3010i、3020iとの最大の違いはキャビネット。Gel Core(※)というQ Acousticsの独自技術が盛り込まれていて、音質が飛躍的に向上しています。
キャビネットの共振をいかにコントロールするかというノウハウ、その完成度がどんどん上がっていて、3020iと比べてキャビネット容積が小さいはずなのに、それ以上のスケールを感じさせてくれる。
これがまさにGel Coreを使っている良さだと思います。目を瞑ると大型スピーカーが鳴っているような感覚が得られるんです。最後に聴いたサンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」のベースがとても実在感があって生々しかった。
3010i,3020iではベースが奥まって聞こえるイメージだったけれど、Concept20で聴くと、ぐっと存在感が増してブリブリ鳴るイメージに。シナトラの「グットバイ」で聴けるオーケストラの低弦セクション、チェロやコントラバスのリアリティも俄然出てきました。よりいっそう本格的なエネルギーバランスが実感できました。3010i,3020iも本格的といったけど、こっちは”超本格的”。さらにその上をいっているスピーカーだと思います。
※GelCore・・・キャビネット間にゲル状の膜(画像グリーン部分)を挟み込んだ2重構造の特殊キャビネットを採用。このゲルが再生時に発生するスピーカー本体の共振を吸収し、熱に変化させます。
●3機種試聴を終えて
今日は3モデル聴かせてもらいましたが、3モデルともコストパフォーマンスが抜群です。この3モデルの音を聴いて値段を言い当てられる方はいないんじゃないかな。
それくらい価格の枠を超えた本格的な音がするスピーカー群だと思いました。
音楽を聴く上で大事な帯域というのは、ミッドロウからミッドにかけての人の声の帯域。その帯域の音の表情をいかに細かく出すかというところに設計者のこだわりがあるんだと思います。この3モデル、太鼓判を押してお勧めしたいと思います。
●試聴CD一覧
◆左:「only the lonely / FRANK SINATRA」 ◆右:「ABRAXAS / SANTANA 」
●Q Acoustics3000iシリーズ、Concept20は弊社ECサイト・ESF STORE 楽天市場店にて販売中。
山本浩司先生 プロフィール
- ステレオサウンド社の雑誌「HiVi」「ホームシアター」編集長を経て、オーディオ・ヴィジュアル評論家へ転身。最新のオーディオ&ヴィジュアル機器を雑誌やWEBで評論している。