原摩利彦(音楽家) 試聴記事
以前弊社のインタビューにも応じていただき、6月5日に新作「PASSION」をリリースした音楽家 原摩利彦さんに
Q Acoustics 3010iとaudiolab 8300Aを実際に聴いていただき、レビュー記事を執筆していただきました。
Q Acoustics 3010i | 「”気持ちよさ”を知っているスピーカー」
箱から真っ白な3010i を取り出す。当たり前だが、パッシブ型なので電源を取る必要がなく、スピーカーケーブルをアンプとつなげるだけでセッティングは完了だ。ケーブル接続部分は差し込むだけである。
このスピーカーは不思議なサイズ感を醸し出している。奥行きがあるので側面から見ると大きく感じられるが、正面から見るとスリム。さらに真っ白なボディをしているのもあって、スマートな印象を受ける。カバーはマグネットがついているので容易に取り付け/外しが可能だ。
*今回試聴していただいたQ Acoustics 3010i (arctic white) サイズ感が分かりやすいようにiPhoneを置いていただいた。
*アンプとスピーカーの接続にはQEDのXT40iを使用している。
Macbook Proにインストールされた音質に定評のある再生ソフト「Audirvana」にデータを読み込み、再生した。USB接続でオーディオインターフェイス「RME Babyface Pro」、そこからXLR接続でアンプ「Audiolab 8300A」に繋いでいる。またヴァイナルも聴きたかったので、Technics SL1200-MK5から直接アンプへと接続した。
*試聴環境: macbook proとI/OであるBabyface Pro(RME)を接続し、そこから8300Aへアナログ接続している。
まず最初にビル・エヴァンズ・トリオのライブ音源のアナログ盤「Bill Evans Trio at Shelly’s Manne-Hole, Hollywood, California」をかけた。一瞬で部屋の雰囲気が変わった。ウッドベースの柔らかい低音とドラムのブラシのくっきりとした音像、そしてライブ感のあるピアノ。気持ちいい!プチプチというヴァイナルノイズも良い具合に聞こえる。これはヒップホップも絶対によく鳴るはずだと思い、De la Soulの「Stakes is High」と盤を入れ替えた。やっぱり!ベースとドラムのグルーヴがぐっと胸にきて、ボーカルはとても近くに存在する。
好印象だったのは音量を小さくしてみても気持ちよさが維持されることだ。スピーカーによっては音量を小さくすると、低音が中高域の繊細さを邪魔することがある。でも3010iはそんなことはない。
坂本龍一「The best of “Playing the Orchestra”」は、オーケストラの弦楽セクションが特に美しい。中低域のストリングはゾクッとするような快感を与えてくれるし、木管のメロディも豊かに、ピアノもオーケストラに埋もれすぎることなく響く。一方、ピエール・ブーレーズ指揮ドメーヌ・ミュージカル・アンサンブルのシェーンベルク「浄夜」(弦楽六重奏版)のような甘美ではなく、冷静な演奏もそこで弾いているかのようにあっさりと鳴る。
ここからはデータ再生になる。最初に筆者が録音した落ち葉を踏む音を聴いてみた。フィールドレコーディングをよくする筆者としては、世界を切り取った音がどう鳴るのか気になるのである。再生するとビル・エヴァンズのときのように部屋の空気が一気に変わった。カサカサとなる落ち葉、風のボボボという低域もきちんと再生されている。波の音を流してもよい音響空間を作り出してくれた。
Alva Noto & Ryuichi Sakamotoの「Vrioon」を聴いてみる。超高域の電子音がもう少し聴こえて欲しいとは思うが、それでもかなりいい感じではある。ヤノカミ「恋は桃色」はレイハラカミの心地よく、3010iと相性のよいエレクトロサウンドに、矢野顕子のボーカルが入り極上の体験が出来た。もう一つ、とてもよいと思ったのはクイーンの「Bohemian Rhapsody」である。フレディのピアノとは相性がよかった。昨年、「A Night At The Opera」は劇場でたくさん聴いたので(注)、いかによく再生されているかがよく分かった。
今井信子が演奏するヴィオラ独奏曲、ストラヴィンスキー「Elegy for Solo Viola」では演奏者の息遣いと弦の質感がありありと再現され、武満徹のサウンドトラック「利休」ではルネッサンス音楽とオーケストラ、邦楽器が作り出す小宇宙が広がる。
SpotifyやApple Musicでも十分によい音楽体験ができると思い、切り替えた。ドローンミュージックなどレゾナンスが重なり合う音楽では、やや低中音域がオブラートに包まれたようになるが、やはり前面に出る澄み切ったボーカル、滑らかなストリングスはかなり美しい。ビリー・アイリッシュのような音数が少なく、かつ低音が効いたトラックはこのスピーカーで聴くと気分が盛り上がる。ヨハン・ヨハンソンやRHYEなど、どんどん聴いていった。
*今回 原さんに試聴していただいたホワイトの他にブラックとウォールナット仕上を展開中。
*スピーカーをドライブした8300Aは今回の様にプリメイン・インテグレーテッドアンプとしてはもちろん プリアンプとしても使用可能なスタイリッシュかつ高音質な製品。
いろいろなトラックを聴いて思ったのは、このスピーカーは「気持ちのよいところ」を知っているということである。どのジャンルの音をかけても、アナログ盤でもデータ再生でも音源の「気持ちよさ」をちゃんと把握して再生しているように思える。だからSpotifyやApple Musicといったサブスクリプションサービスとも相性がよい。ハイレゾ音源の聴き分けをしたり、繊細で透明に近い高音質の中に入り込むというよりは、普段の生活の中でより音楽と近くなるために一役買ってくれるスピーカーだと思った。超高域と低音がややファットに鳴るという点もあるが、税別ペアで2万4千円という価格を考慮すれば、それほど問題ではない。それよりもこの価格で得られることに注目するべきだと思う。真っ白なボディは部屋に置いても重々しくはなく、すっきりとしている。
この春から家で過ごす時間が多くなった方は多いだろう。筆者もずっと在宅で仕事をしている。旅行がしにくくなった今、すっと違う世界へと連れて行ってくれる音楽とその音響設備はとても重要である。Q Acoustics 3010iは、手軽に、そして気軽に音楽の旅の手助けをしてくれる。
注: 筆者は2019年クイーンがオフィシャルクレジットされたNODA・MAP「Q: A Night At The Kabuki」のサウンドデザインを担当し、「A Night At The Opera」の音源を何度も劇場で聴いた。
*今回の試聴の際の使用機材及び接続。
Q Acoustics, audiolab,QED製品は全国の取り扱い店舗及び弊社ECサイト、楽天市場にて販売中
掲載写真下部(*)のテキストは弊社による注釈です。
リリース情報
Marihiko Hara 《PASSION》
ヨハン・ヨハンソンにも通じる音響派的側面と、久石譲やチリー・ゴンザレスらが奏でるような、親しみやすいピアノのメロディセンスを併せ持ち、京都を拠点に国内外問わず現代アートや舞台芸術、インスタレーションから映画音楽まで幅広く活躍する音楽家、原 摩利彦。
そんな原 摩利彦の3年ぶりとなる待望のソロ作品『PASSION』が6月5日にリリース!心に沁みる叙情的な響きの中に地下水脈のように流れる「強さ」を感じさせる原の音世界がぎゅっと詰まった全15曲収録。マスタリングエンジニアに原も敬愛する故ヨハン・ヨハンソンが残した名盤『オルフェ』を手がけた名手フランチェスコ・ドナデッロを迎え、丁寧に紡ぎ出された音に、さらなる深みと生命力を与えている。
(レーベルサイトより引用)
商品情報
原 摩利彦 プロフィール
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京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科修士課程中退。
音風景から立ち上がる質感/静謐を軸に、ポスト・クラシカルから音響的なサウンド・スケープまで、舞台・ファインアート・映画など、さまざまな媒体形式で制作活動を行なっている。ソロ・アーティストとしてアルバム《Landscape in Portrait》、《PASSION》をリリース。亡き祖母の旅行写真とサウンドスケープの展覧会《Wind Eye 1968》を発表。坂本龍一とのセッションやダミアン・ジャレ+名和晃平《VESSEL》、野田秀樹の舞台作品、《JUNYA WATANABE COMME des GARÇONS 》パリコレクションの音楽などを手がける。アーティスト・コレクティブ「ダムタイプ」に参加。
www.marihikohara.com