メニュー

オーディオ評論家 山本浩司先生 Q Acoustics 3050i / audiolab 8300XP試聴 - イースタンサウンドファクトリー

WORKS導入実績

オーディオ評論家 山本浩司先生  Q Acoustics 3050i / audiolab 8300XP 試聴

YMMTsensei 200720

オーディオ雑誌HiVi、ステレオサウンド等でハイエンドオーディオ評論をなさっている山本浩司先生の都内アトリエを訪ねました。

今回は、 Q Acoustics「3050i」、audiolab「8300XP」を試聴、評価していただきました。

試聴機材

  • Q Acoustics 3050i (2ウェイバスレフ式トールボーイスピーカー)
  • audiolab  8300XP(ステレオパワーアンプ)

IMG 6875 90

 ● Q Acoustics  3050i (ホワイト)

 

前回はQ Acousticsの新製品である小型2ウェイ機3モデルを聴いて、その圧倒的なコストパフォーマンスの高さに驚かされたわけですが、今回はトールボーイタイプの3050iを試聴しました。

3050iは6インチ半のウーファー2基で22mmトゥイーターを挟み込む、いわゆる仮想同軸タイプのフロアスタンディング型です。3050iは音の良さ、そのパフォーマンスの高さを勘案すれば激安だとは思いますが、値段を度外視しても、立派な本物のハイファイ用スピーカーだと思います。このスピーカーはぜひ多くのオーディオファイルにお聴きいただきたいですね。

 

 

 

●  3050i 試聴 

 ー今回は山本先生に4枚のアルバムから1曲、映画3作品から1シーンずつ試聴していただきました。

 

 

・The Real Group「輝くアカペラヴォーカルの奇跡」(Spice of Life RG-0004)

 

-描写力の高さ 音の追随性の高さ-

 

IMG 6870 realgroup

 

最初にThe Real Groupというスウェーデンの男性3名女性2名のアカペラグループのCDを聴きましたが、解像度の高さ、音の見晴らしの良さ、細かなディテールの描写力に驚きました。これはスタジオ音源ですが、5人のシンガーが2本のスピーカーが描き出すステレオピクチャーに、綺麗にピシッと並んでいるのが目に見えるようにリアルに感じることができました。ステレオイメージが極めて明瞭なんですね。これはすばらしい表現力です。
これはQ Acousticsのスピーカー全体に言えることですが、ヴォーカル帯域、つまりミッドローからミッドレンジにかけてのリニアリティの良さ、細かな音の抑揚や音色の変化に対する追随性が極めて高いんです。前回試聴した3010i、3020iもfゼロ(最低共振周波数)を欲張らずに、ヴォーカル帯域の表現力に力を入れているという話をしたかと思うんですが、それに加えて本機は、ダブルウーファーになったことで低域の充実度が上がり、量感や質感、厚みが3010iや3020iよりもケタ違いに表現されていました。

 

 

・Prince 「the rainbow children」 Muse 2 The Pharaoh  (ビクターエンターテインメント VICP-61736)

 

-非常に透明感の高い低音 値段以上の素晴らしい音-

 

IMG 6859 rainbow children

 

この楽曲はとてもワイドレンジで、低域のキックドラムが写実的且つリアルに録音されています。実をいうとぼくはスピーカーの試聴テストでこのトラックをよく使いますが、20万円以下のスピーカーで大きめの音量で再生すると破綻するスピーカーがほとんどなんですよ。この曲の、ものすごく下まで伸びた低域がハイレベルで録音されているので、ドンッとキックドラムが入った時にボイスコイルがボトミングしてノイズになってしまうスピーカーが多いわけです。
でも3050iはボリュウムを上げても全然不安感なく、を再生してくれました。安価なスピーカーですが、駆動回路などかけるべき所にしっかりお金をかけて設計しているなと思いました。この曲はドラム以外はプリンスのワンマン・レコーディングなんですが、ベースが深く伸びて広がる感じとか、キーボードの音がフワッと広がる感じが精密に表現されていて驚きました。少なくともこの値段のスピーカーでこんなすばらしい音は今まで聴いたことがないですね。


 

 

 

・Rolling Stones「Sticky Fingers」 I Got the Blues (UIGY-9579)

 

-立体的な音の広がり 高さの表現が巧み-

 

 IMG 6871rs sticky fingers


これは1960年代のアメリカ南部のソウル・ミュージックに憧れたストーンズが、彼らなりにその愛情を降り注いで作った曲です。イントロで2本のギターがLチャンネル、Rチャンネルでアルペジオを弾くんですが、その時の音の広がりが立体的で、思わずエッと声が漏れたくらいリアルな音が聞こえました。とても生々しいんです。仮想同軸タイプのスピーカーって、ぼくの過去の経験から言うと、高さ方向の音場感が出にくいんですよ。つまりウーファーでトゥイーターを挟み込んでいるので、音響エネルギーが垂直方向のアコースティックセンター、つまりトゥイーター近傍に集中することになるので、縦方向の広がりよりも音像の厚みが強く出る傾向を持つんです。3050iはクロスオーバーネットワークの設計が巧みなのでしょう、仮想同軸タイプのスピーカーとは思えないくらい高さの表現が巧みで、立体的な広がり感がありましたね。

 

 

 

 

・上野耕平「アドルフに告ぐII」林英哲:ブエノ ウエノ 藤倉大作曲 (COCQ85478)

 

-音色の変化が的確 驚くべき完成度-

 

IMG 6868 uk adolpheii


新進気鋭のサキソフォン奏者、上野耕平さんのアルバムで、世界的に有名な林英哲さんの和太鼓とコラボレーションした曲です。新進気鋭の作曲家、藤倉大さんが上野さんのために書き下ろし、世界初録音したものです。
大きさの違う和太鼓を何個も並べて叩いていますが、一番大きな太鼓をたたいた時の下に伸びていく余韻が、驚くべき深みで表現されて凄まじい音でした。
それと上野さんのサックスと林さんの和太鼓の丁々発止のインタープレイ、スタジオで対決しているその緊張感がありありと伝わってきて、とてもすばらしかったです。上野さんはすごい透明感のあるサックスを吹くんですが、このスピーカーは音色の変化も的確に捉えています。
正直この値段でこんなスピーカーを作れたのは奇跡だと思います。小型2ウェイに比べて、エンクロージャー容積はおおきくなりますから、音の剛性面ではブックシェルフに比べ弱くなるはずなんですが、エンクロージャーの弱さによって音がにじんだり定位が曖昧になったりすることもまったくありません。驚くべき完成度のスピーカーだと思います。

 

 

●映画

 

先ほど申し上げた通り、このスピーカーはミッドローからミッドレンジにかけてリニアリティがきわめてよいので、これは映画のダイアローグを聴いても凄いんじゃないかと思って、我が家のホームシアターで「地獄の黙示録」「コールド・ウォー」「マザーレス・ブルックリン」の3作品を1シーンずつ見ました。

 IMG 6968

 

 

 

 

・「地獄の黙示録 ファイナル・カット」(DAXA-5693)

 

-劇場をはるかに凌ぐ質感-

 

IMG 6895


オープニング・シーンでヘリコプターが旋回し、ドアーズのジム・モリソンが歌う「The End」が流れて、ヘリコプターの音とモンタージュさせながら主人公ウィラードのホテルの一室が映し出されるシーン。ここはいつの間にかヘリコプターの旋回音がその部屋の扇風機の音に変わっていき、そこから彼のモノローグが始まるんですが、この声の質感が素晴らしく良かった。
実はこの映画、IMAXとDOLBY CINEMAでも見たんですが、大規模劇場は家庭では考えられないレベルの音圧レベルで再生されています。ホームシアターは音量調整できる部分がいいところだけど、3050iでこのシーンを最適と思えるボリュウム設定で再生すると、劇場をはるかに凌ぐ質感のよい声を聴くことができました。

 

 

 

 

・「コールド・ウォー」(PXR471 /「マザーレス・ブルックリン」(1000762322)

 

ー映画の世界に彷徨いこむ感覚 ミッドレンジの音像の厚さー

 

IMG 6911     IMG 6923

 


「コールド・ウォー」「マザーレス・ブルックリン」はどちらも1950年代を舞台にした映画で、前者はパリのジャズ・クラブ、後者はニューヨークのジャズ・クラブでの凝った演奏シーンを見ました。
このスピーカーで聴くと、自分が1950年代のパリ、ニューヨークに彷徨い込んだような、そんな感覚を覚えてしまう生々しさがあります。
後ろにぼくの愛用スピーカーであるJBL K2 S9900が置いてあるんだけど、見ているうちにどっちが鳴っているかわからなくなるくらいでした。
というのも、実力不足のスピーカーって、その弱点にどうしても耳が行っちゃうんですよ。トゥイーターのエネルギーが足りないとか、ウーファーの質感が悪いなとか、そこでハッと我に返るんです。ぼくたちみたいなオーディオマニアはスピーカーの弱点が気になって、映画の世界に入り込めなくなってしまうことが多々あるけれど、このスピーカーにはそういうことが全くありませんでした。
スペックを考えてどのくらい低域を伸ばそうかとか、今はハイレゾの時代だから高域をどれくらい出そうかとか、そういう部分を気にして設計しているスピーカーもあるけれど、周波数特性を伸ばせば伸ばすほど真ん中の帯域が薄くなっちゃう。3050iはある程度割り切って音づくりされていて、ミッドレンジの音像がとても厚い。音調整の経験が豊富で、酸いも甘いも嚙み分けたベテラン・エンジニアが手がけたスピーカーなんだろうなと思います。

 

 

 

3050i allcolor

 Q Acoustics 3050i カラーラインナップ(左からホワイト,ウォルナット,ブラック)

 

 

 

 

 

●audiolab 8300XP 試聴

 

-オーセンティックな王道サウンド ステレオイメージの良好さ-

 

 

IMG 6963     IMG 6956

 


audiolab 8300XPは、充実した電源回路を有したオーソドックスなAB級 ステレオ・パワーアンプです。32万円という値段は、ハイファイオーディオの世界では比較的安価な価格帯に位置づけられます。
今日はぼくがふだん使っているプリアンプ OCTAVE The Jubilee preampとXLRバランス接続で試聴しました。8300XPのバランス回路で構成されているので。本機の音を一言でいえば、オーセンティックな王道サウンドということになろうかと思います。
中低域から中域にかけての厚みのある表情豊かな音、ドライバーユニットを気持ちよく隅々まで駆動しているというイメージの音です。スピーカーを駆動するドライヴァビリティが非常に高い。
エネルギーバランス的にはハイエンドがヒュッと伸びた感じはなく、ファンダメンタル帯域の充実ぶりを実感させます。内部をのぞいてみると、真ん中前方に巨大なトロイダルトランスがあって、電源回路が半分以上占めています。また、LR対称のシンメトリー回路構成になっていて、ステレオイメージの良好さの理由がわかります。理にかなった設計がなされている。
今日はブラック仕上げを試聴しましたが、見た目は大きな黒い塊で、素っ気ないシンプルを極めたデザイン。感心したのは、スピーカー端子が2系統あってバイワイヤリング接続がしやすく、ワンタッチでブリッジ接続してモノーラル・アンプとしても使用できる点。非常に使いやすいアンプだと思います。

 

 

8300XP4

8300XP ステレオパワーアンプ (シルバー)

 

 

●Q Acoustics 3050i / audiolab 8300XPは弊社ECサイトESF STORE 楽天市場店にて販売中。


山本浩司先生 プロフィール

  • ステレオサウンド社の雑誌「HiVi」「ホームシアター」編集長を経て、オーディオ・ヴィジュアル評論家へ転身。最新のオーディオ&ヴィジュアル機器を雑誌やWEBで評論している。
  • IMG 6489

CONTACT