REVOX PICCOLO S60 試聴
今回の試聴レポートはRevox社の小型モニター「Piccolo S60」にフォーカスしました。
Piccolo S60は、縦140mm x 横140mm x 奥行140mmの完全キューブ型の同軸型2ウェイシステムです。
低域は116mmのアルミニウムコーンを使用し、高域は14mmのドームを使用しています。
サイズの割に感度が高く(89dB@1m/2.83V)、耐入力も高い(RMS100W@4Ω)のが特徴です。
試聴は、Revox社のネットワークレシーバー&パワーアンプJoy S120と、CDプレイヤー Joy S22(共に国内取扱無)、
SPケーブルにはQEDのReference Silver Anniversary XTを使用しました。
音源には、TIDALのストリーミングサービスとCDディスクを使用しています。
小型ながら色付けなくフラットな再生をしてくれるPiccolo S60はオーディオ用途としてはもちろん、
ニアフィールドモニターや立体音響、マルチch用のスピーカーシステムとしても高い評価を得ています。
まずはカール・リヒター&ミュンヘン・バッハ管弦楽団によるマタイ受難曲から、「第47曲 マリア;憐れみたまえ、我が神よ」を、TIDALのストリーミングで聴いてみました。
アンドレイ・タルコフスキーの遺作「サクリファイス」を初めて観た時から、同曲を気に入り、今まで様々なサウンド・システムで聴いて来ました。
今回小型モニターPiccolo S60が、どんな再生をするのか、すごく楽しみにしていました。試聴は、ストリーミングのフォーマットを16bit 44.1kHzで再生しました。
すると、バイオリンのオブリガードから始まり、ヘルタ・テッパーが歌い終わるまでの約4分30秒が、あっと言う間に終わってしまったのです。この名演に、初音で引き込まれてしまったのです。(結局スピーカーを分析するために、もう一度聴き直しました。)
Piccolo S60は、超低域や、超高域がすごく聴こえるわけではありませんが、音楽にとって本当に大切な帯域が、きちんと再生されています。きちんと音楽が再生されるから、スピーカーの存在を忘れ、音楽に心を持っていかれたのでしょう。
またPiccolo S60は、サイズ相応の鳴り方をしていて、音にデフォルメが無い感じがしました。
次に、ブライアン・フェリーのアルバムAS TIME GOES BYから、
「AS TIME GOES BY」をTIDALのストリーミング16bit 44.1kHzで聴いてみました。
ピアノ、ドラム、ベース、ギターの4ピースバンドを、ストリングスが包み込む感じ、それをバックにブライアン・フェリーが、妖艶に歌いこむ作品です。
すごく自然に聴こえました。スピーカーの音像が、大きくなりすぎたり、小さすぎて窮屈な感じは、全くありません。
そのため非常に余裕がある鳴り方をしており、音楽に集中することができました。
次に、イェジのアルバムWhat We Drewから「My Imagination」をTIDALのストリーミング16bit 44.1kHzで聴いてみましす。
ベースとキックの打ち込みが、破綻しないで(歪まないで)聴こえるので、気持ちが良いグルーヴ感が生まれています。
ダンスミュージックには、このポイントが大事だと思います。
必ずしも40Hzや30Hzが再生できる必要はありません。90~110Hzくらいが落ちずに再生できて、且つその下の帯域はスムーズに減衰して行くことが大事です。
100Hzが落ちずに再生できるが、95Hzが10dB、または15dB落ちてしまうのでは、グルーヴ感が生まれません。例えば100Hzが再生できたとしたら、その下の帯域は、ゆるやかに落ちて行って欲しいのです。
Piccolo S60は、F特=周波数特性が90Hz台まで落ちずに、それ以下の周波数は、すごくなだらかに下がって行っています。実に理想的な小型モニターと言えます。
次は、CDを3枚聴いてみることにします。
1枚目は、デビッド・ボウイのアルバムHeroesから、「MOSS GARDEN」です。
ポイントは、ボウイの弾く琴の音色と、シンセサイザーとギターが織りなす奥行感をきちんと再生できるかどうかです。
一聴してみると、見事な奥行感です。琴の音色も素晴らしい。
前述した、90Hz台をきちんと再生できるのと、位相感も抜群に良いのでしょう。位相感が優れているのはPiccolo S60が同軸型の2ウェイシステムであることも理由の一つです。
シンセサイザーとギターが奥の方まで定位し、琴がその中央にきちんと配置されています。
2枚目は、ブライアン・イーノがプロデュースで、ララージのアルバムAmbient3から、「Meditation NO.2」です。
ポイントは、ララージの弾くチターの音色と、ブライアン・イーノが操るエコーやリバーブで作られる空間です。
チターは30本の伴奏用の弦と、5,6本の旋律用のフレット付弦が張られた楽器で、実に深みがある響きをしています。
その独特の響きに、ブライアン・イーノは空間系エフェクターで、更なる彩を加えていますがその空間系エフェクターが、すごくよく聴こえます。
これは、Piccolo S60が持つ再生能力の高さの現われなのでしょう。
3枚目は、アルカのアルバムKick I から「Afterwords」でこの曲のポイントは、ビョークの声と電子音とのバランスです。
コーラスが電子音に溶け込み、左右、大気のように広がり、エフェクトされたベースとキックドラムがうねる。その中央にビョークが絶対的に存在する感じです。
一聴すると、ビュークの歌は、ディレイやリバーブを含め明瞭に再生されました。音色も大丈夫です。
シンセやSEのレイヤーもきちんと見えます(=聴こえます)。そして歪ませたキックとベースの音を捉えることができるので、Piccolo S60は小型モニターとして相当な域だと思います。
試聴を終えて
全ての試聴を終えて思うのは、Piccolo S60は再生能力の高さと、定位の良さを兼ね備えた小型の同軸2ウェイモニターであること。そして、感度が高いので小さな負荷でも明瞭に聴こえること。音像が大きくならず、音が正確であることです。
派手さは無いが、非常にモニターとして優秀でした。
今回は、2チャンネルの試聴でしたが、次回はPiccolo S60とS04をサブウーハーに加えたサラウンドシステムを組んで、映画やライブのBlu-ray試聴を企画したいと思います。
相当レベルの高いホームシアターができると思います。
壁面用のブラケットも既存であるのが魅力です。
ESF 直販ECサイト, ESFストア楽天市場店にて販売中
PICCOLO S60 製品仕様
タイプ |
パッシヴ 同軸2WAY |
---|---|
スピーカーユニット |
LF 90mm アルミニウムコーン / HF 25mm ソフトドーム |
周波数特性 |
65Hz - 20kHz |
定格インピーダンス |
4Ω |
入力 |
100W |
外形寸法 |
140 x 140 x 140 mm H x W x D |
本体重量 |
1.75kg (1本あたり) |